【日繰り資金繰り表】を作れば対策が見えてくる
手遅れにならないために・・
経営危機に直面したとき、私もそうであったように、この経営危機を誰にも悟られてはいけないと、経営者は追いつめられ、孤独になり冷静な判断をすることが出来なくなります。
資金繰りに窮している時に、「幸せ企業」や「長寿企業」と言われても、経営者の耳には届きません。経営者の頭の中にあるのは唯一お金のこと、つまり「資金繰り」のことばかりになってしまい、創業のときの理念やビジョンなどはどこかへ消えてしまい、ひたすら企業の存続のみ考えた対策しか取れなくなってしまいます。
「衣食足りて礼節を知る」(孔子)
「恒産なければ恒心なし」(孟子)
まさに、
「貧すれば鈍する」状態です。
賢くて人格的に申し分なかった経営者でも、資金繰りに窮すると知恵や頭の回転が衰えてしまい、苦し紛れに出来ない約束をしたり、うそをつくなど愚かなことをするようになります。
「資金繰り対策」についても、これを解消するのは「売上アップ」か「借入」と短絡的に考え、利益を無視した売上アップ対策を採ったり、返済の見込みのない無理な借入に走ってしまいがちです。
何とか「借入」で一息つくものの数ヶ月もすれば、以前よりも資金繰りが厳しくなっています。当然です。
経営そのものには何も手を打っていないのですから…。
この行動が倒産への「負の連鎖」を引き起こしてしまうのです。
この「負の連鎖」を断ち切るためには近視眼的に企業を見る経営者に代わって、俯瞰的に、冷静に企業や家族のことを観てアドバイスできる人の存在が不可欠です。
懸命なアドバイザーがまず取り掛かるのが「止血」つまり「緊急資金繰り対策」です。
最初にお断りしておきますが、「緊急資金繰り対策」はあくまで経営再建対策を行うための準備作業です。
歯医者に行っても、歯が疼いているときは痛み止めの注射を打ってくれるだけで治療はしてくれません。
高熱があるときはまず熱を下げ、体力を取り戻してから本格的な治療に入るはずです。
経営再建という治療を施し健康な体に戻るのには相当の時間がかかります。
利益を伴った売上対策や資産対策などはすぐに効果が出るものではありません。
それらが効果を出す期間、資金繰りにわずらわせられることなく経営に打ちこめるためにするのが緊急資金繰り対策なのです。
ほとんどの中小企業経営者は「経営再建=資金繰り対策」と考えられています。
緊急資金繰り対策はあくまで「緊急」です。
痛みが取れ、熱が下がったら安心するのではなくそこから本当の意味での再建対策が始まるのです。
運転資金借り入れや借り換え、リスケ(リスケジュール:債務返済を繰延すること)はそれ自体で再建対策には成り得ません。
借り入れ、借り換えやリスケが出来たから再建は成功などという専門家は問題外です。「再建対策の時間を借りる」ための一つの手段に他なりません。
同様に、以下に述べているのは資金繰りの緊急対策であって抜本対策ではないことを忘れないで下さい。