いまの会社の内部からどのようにしてお金を生み出すか、それが「資産負債対策」
支払い優先順序は、あくまで資金繰りが苦しい緊急時における苦肉の策です。
支払期日を延ばす“延命方法”を述べただけであって、支払義務がなくなったわけではありません。いずれ、どれも支払わなくてはいけません。
「中小企業再生プログラム(旧、経営再建プログラム)」の対策は効果のあるものほどお金を生むまでの時間がかかります。
経費削減対策でも早くても数ヶ月、対策によっては半年以上かかります。
ということで、“延命”している間に何らかの形でお金を作る必要があります。
もちろん、個人のお金は会社から戻してもらえることが【日繰り資金繰り表】ではっきりしない限り会社につぎ込むべきではありません。
まずは「資産対策」で会社の内部からお金を生み出す方法を考えてみましょう。
お手元に最近の決算書・勘定科目内訳明細書・総勘定元帳をご用意ください。
貸借対照表(B/S)の左側の部分(資産の部)をご覧ください。
この部分は大きく「流動資産」と「固定資産」に分かれていますが、今回の話は「会計学」の話ではなく、再建のための話ですのでB/Sの詳しい解説はやりません。
ところで、「資産」とはどのようなものを言うのかおわかりでしょうか?
企業会計における「資産」とは、主に次のようなものを指します。
現金、預金、受取手形(現金の代わりに受け取った手形)、売掛金(売上先からまだ入金されていないお金)、商品・製品(在庫)、原材料、仕掛品(まだ完成していない製品や工事)、貸付金、土地、建物、建物付属設備、車両、機械工具、事務機器、特許権、有価証券(株式など)、出資金などです。
ここで注目していただきたいのは
(c)「その他の流動資産」の「立替金・未収入金・仮払金・貸付金」など
(d)「固定資産」の「工具・器具・備品」など
です。
科目名は決算書で確認できますが、その個別明細や詳細については勘定科目内訳明細書・総勘定元帳を開いてみてください。
経営危機に陥った会社の経営者は不足する資金を借りてくることと売上を上げることのみに腐心していますが、
金額の多少はあるものの今ある会社の資産・負債からお金を生み出すことを忘れてはなりません。
(a)で洗い直しをしなければならないのは「売掛金」です。
全ての売掛先をチェックしてみてください。失礼な言い方ですが、売掛先もあなたの会社と同じように
「うるさく言ってこない支払い先は放っておこう」
と考えているところがあるかもしれません。
言い難いかもしれませんがこのような売掛先の気持ちは良く分かるといってもあなたの会社が倒産すれば元も子もありません。
段階を追うことが必要ですが、ある程度強い請求態度を示さなければなりません。
不良化している売掛金についても、その相手が倒産していれば別ですが、内容証明など法的請求してみると、意外とあっけなく振り込まれてくるケースさえあります。
(b)の「棚卸資産」は経営危機に陥っている会社の多くは過剰評価しています。なぜなら,金融機関へ提出する際一番粉飾しやすいのがこの科目だからです。
この段階で必要なことは、金融機関に良く見せて、借り入れしようということより、不良化している棚卸資産を1円でも現金化することです。
そのためには棚卸のための「ものさし」を決め、その「ものさし」にそぐわない商品は処分して、現金化する必要があります。
(c)の「その他の流動資産」には前払い費用・未収入金・立替金・仮払金などを一つ一つチェックしなければなりません。
意外と目こぼししているものが出てきます。
経営危機に陥っている会社はここに何年も同じ金額が固定しているものがあります。
その多くは現金化できないもので実質ゼロ円です。
税理士の指導(?)で見せかけ上悪いといって残しておいている数字です。
つまり、粉飾しているということです。
しかし、中には、この人は払ってくれないのでということであきらめているケースがあります。
請求していないので、法的には時効になっているかもしれません。しかし、ダメ元で内容証明を出しただけで支払ってもらったケースが幾つかあります。
(d)の「固定資産」の「工具・器具・備品」などについては決算書に付いている
「固定資産台帳兼減価償却計算書」
をコピーして、店内や事務所・倉庫などを指差し確認するくらいのつもりで
「今、本当に必要なものなのか」
チェックしてみてください。
埃をかぶった事務什器などが倉庫に場所を取って眠ってしまっていませんか?
無駄な「棚卸資産」や「工具・器具・備品」を売却することは、単に現金を産むばかりでなく、作業効率をアップさせます。
ひどい例では、不良化した固定資産を保管するために倉庫を賃貸している会社さえあるのですから。
「こんなもの売れるわけない」と思い込んでいるものでも売れる可能性はあります。
たとえば、壊れて使い物にならない機械であっても、日本のどこかには「オブジェにしたい」と考えるマニアがいるかもしれません。
不良在庫でも、誰かが別の目的で欲しがっている可能性もあります。
売り方もいろんな方法が考えられます。
捨てるのにお金がかかると思っていたものが、思いもかけない値段で売れた例は枚挙にいとまがありません。
みなさんは「赤いクリップ」の話をご存知ですか?
カナダのカイル・マクドナルドという人が、「1個の赤いペーパークリップを何かと交換してほしい」とインターネットで求めたのです。そうすると、クリップは魚の形のペンに化けました。その後、ドアノブ→キャンプストーブ→発電機→パーティーセット→スノーモービル→旅行→車などへと物々交換が発展し、最後には家を1軒得たのです。
みなさんの会社の隅には、ほこりをかぶって眠っている備品はありませんか?
現在は、ヤフーオークションやメルカリなど便利なサイトがいくつもあります。
インターネットのオークションに出品すれば、誰かが購入するかもしれません。
今まで「役に立たなかったもの」がお金になるのです。
今はゴミを捨てるのにもお金がかかる時代です。
たとえ数千円にしかならなくても、要らないものが現金に化けるのでしたら、すぐに実行すべきです。
ともかく前に進んで成功体験の端緒のつもりで取り組んでみてください。
このうち、売却の候補としたいのは、車両、機械工具、事務機器、有価証券、そして不良在庫です。
土地など高額資産については、再建のスキームで大きな鍵になりますのでここでは対象にしません。
もちろん、これらをすべて売れというわけではありません。全部売ってしまったら、その後の経営が成り立ちません。
もちろん売るべきものは、
「売っても今後の経営に支障を及ぼさないもの」
に限ります。
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