売上を上げるより、原価率とロス率を下げる「原価(仕入)対策」
経営危機に陥って資金繰りに苦しんでいる会社の多くは、売上さえ戻れば何とかなると考え、また目先の資金を確保するために原価割れの受注をしたり、極端な割引セールをする傾向があります。
ひどい場合は、思いつきで新商品を発売したり、新店舗を出したりなどの「一発逆転」を狙う経営者も跡を絶ちません。
いうまでもなくこれらの売上対策は「最悪の倒産」への負の連鎖の道を走るのに加速度をつけるだけです。
【原価(仕入)対策】
売上対策はあくまで利益を伴った売上対策でなければなりません。不思議なことに危機に陥った会社は経費の削減には血眼になるのに最大の変動費である仕入についてほとんど手を打たれていません。
年商10億円粗利益率20%(粗利益額2億円)の会社の売上を5%上げるのは前述の原価を無視した方法以外即効策はありえません。
たとえ5000万円の売上が増えたとしても粗利益率が1%ダウンすれば
10億5000万円×19%=1億9950万円
の粗利益額になってしまいます。さらに売上5%を上げるためには販売経費がかさんできます。
逆に、売上を5000万円つまり5%落ちても、粗利益率を1%上げることができれば
9億5000万円×21%=1億9950万円
と同じ額になります。
さらに中小企業再生プログラム(旧経営再建プログラム)の現場では、「仕入先別貢献度表」(表1)
を作成して、どの仕入先が営業利益やキャッシュフローに貢献しているのかをランキング付けしてチェックします。これをチェックしてみると、貢献度が低いのに支払サイトが早すぎたり、預けている取引保証金が仕入金額の支払いサイト期間より大きいままになっているなどさまざまな検討事項が見えてきます。
「経費削減対策一覧表」(表2)や「仕入先別貢献度表」、さらに既存事業の売上対策で使用する
「得意先別貢献度表」(表3)から有効な対策を見つけ出す作業のとき、わたしは口酸っぱく「要素分解しろ」といいます。
「もっとも重要な仕入先や得意先だ」
「古くからの大事な取引先だお客様だ」
とこれらの対策の対象にさえ考えていないところが、その取引実態を「要素分解」してみると、貢献度が驚くほど低い事がよくあります。
昔は大商いの相手だったのでしょうが、現在は利益貢献どころか、足をひっぱているのがよくわかってきます。
極端な話、取引がないほうがいいケースさえ出てきます。
このような取引先には条件変更を提示し、その条件を飲んでいただけないようなら取引中止して、その時間や人員を他に振り向けることも検討すべきです。