【日繰り資金繰り表】の目的と重要点
先ずその重要点を説明するには、【日繰り資金繰り表】誕生のいきさつからお話しなければなりません。
企業再生コンサルタントの道を歩みだした当時、再生現場で最初に取り掛かる仕事は、現在と同じく、「止血」つまり「緊急資金繰り対策」でした。
2002年、井上経営研究所設立した当時の再建現場では、中小零細企業の経営者と膝どころか頭まで突き合わせて、「いったい何日、何ヶ月先まで確実に資金の心配をしないでも大丈夫なのか?」を探ることが最初の作業でした。
しかし、経営危機に陥った中小零細企業に、資金繰り表などあるわけはなく、月末の支払い必要額は請求書が届いてからあわてて掴んでいるような状態です。
当然のごとく
「先月の試算表はありますか?」
「棚卸表は?」
「来月の売上予算は?」
と聞いても、
「ない。」「わからない。」
ばかりです。
すべて税理士に丸投げの中小零細企業経営者に、来月どころか来週倒産してもおかしくない限られた時間の中で事業計画表や資金繰り表の作成を指導する時間的余裕などありません。
この段階、つまり緊急的な資金繰りをコントロールする段階で必要なのは、
1)毎日の繰越残高がひと目でわかること
2)支払日には常に支払資金より支払わなければならないお金のほうが多い状態なので、支払いをストップさせたり、どの支払先を優先して支払うかを決めなければならない。そのために、勘定科目別ではなく入金先・支払先別に、現金・振込・手形別に分類されていること。
3)入金しても右から左では、状況に応じて支払先や金額の変更がありえるので、一部を変更しても自動的に残高に正確に反映されること
4)外部に出す必要のない自社でのみ使える表で十分です。
体裁などよりExcellが初めての人1でも10キーとカーソルキーだけでも使用可能であること。
これらの目的を達成できれば緊急の資金繰りに役立てると考えて、多くの現場で経営者とともに実践と修正を繰り返してできたのが【日繰り資金繰り表】です。
Linaxではありませんが、関数や計算式などすべて隠していませので、多くの人が使用して今も修正や進化を続けています。
資金繰り対策で最も注意しなければならないことは、資金繰りに追われて場当たり的な行動を起こさないことです。
そのために最初にやらなければいけないことは、「日繰り資金繰り表」を作成して、いつ、いくらショートするのかを把握することです。
「来週○○万円不足する・・・どうしよう」
と焦るから、抜本的対策など取れなくなり、どんどん【倒産への負の連鎖】の蟻地獄にはまっていくのです。