「倒産への負の連鎖」から逃れるには
どんなに人間学や時務学を学んで習得していても、長い経営人生の間にはほとんどの経営者が資金繰りに困ったり、経営危機に遭遇したりします。もちろん、「敵国や外患がないと必ず国は滅んでしまう*1と言われるように、経営危機を1つずつ乗り越えて、経営力をつけていかなければなりません。
私も、10年以上増収増益が続いている会社が突然の外的環境の変化であっという間に経営危機に陥った事例を何件も知っています。
「好事魔多し」です。どんなに学んでいても、順風満帆の環境が続くと、この環境はいつまでも続くと錯覚してしまいますし、慢心や奢りが出てくるのは人間の常です。
たとえ「土俵の真ん中で相撲を取っている」*2優良企業でも、事件や事故、外的環境の急激な変化などで、あっという間に経営危機の道に迷い込んでしまいます。
そこでの対応を誤れば、ズルズルと「倒産への負の連鎖」の道を転げ落ちて、倒産という言葉が現実問題になってきます。
「倒産への負の連鎖」とは、
- 財務バランスを無視した投資や借入
- 自己資本比率の悪化
- 支払利息や借入返済の増加
- 赤字に陥る
- 慢性的資金不足
- 無理な売上アップ対策・利益なき受注
- 売上の伸び以上の経費の増大
- さらに利益減少・赤字拡大
- さらに資金繰り悪化
- キャッシュフローを無視した過大な借入や投資(一発逆転の発想)
- ますます利益減少、慢性的に赤字。資金繰り急激に悪化
- 累積赤字や債務超過に陥る
- 銀行借入困難に
- 個人の預貯金や保険の解約など会社外部からお金で資金繰りをやりくりするようになる
- 経営者の頭の中は資金繰りばかり
- カードローンに手を出したり、友達や親戚に無心するようになる
- 加速度的に増加する累積赤字や債務超過
- 完全に資金繰りに行き詰まる
- 商工ローンや町金融に手を出す
- などの連鎖を繰り返して「最悪の倒産」である放置型倒産(夜逃げ・一家離散・自殺)に至る現象のことをいいます。
まさに、人生も経営も水戸光圀の「苦は楽の種、楽は苦の種と知るべし」*3ですから、この「倒産への負の連鎖」を早い段階で断ち切り、正の連鎖に戻ることができれば、一回り大きくなって『長寿幸せ企業』に近づくことができます。
私が初めて中小企業の経営者から電話やメールでご相談いただくのは、残念ながら、赤字になったときではありません。
この段階で危機感を感じてお電話いただくのは非常に優秀な経営者の方々です。
普通、お電話いただくのは、資金繰りに支障をきたしたとき、つまり、会社や個人のお金を支払いつぎ込んでもどうにもならなくなったときです。
金融機関からの運転資金や経営者の個人のお金を使わなければ資金繰りを解消できないということは何を意味するのでしょうか?
それは経営そのもので必要な資金を生み出せないことを意味します。
つまり、この段階でやらなければならないことは、外部資金の導入ではなく、まずは経営の再点検をすることです。
経営危機に陥った経営者のほとんどがこのタイミングを見誤っています。
外部資金や個人のお金を導入して一安心してしまい、しばらくすると又資金繰りが厳しくなってきます。
それは当然ですね。かれらは、経営そのものに何も対策を打っていないからです。
その後は例外なく加速度を付けて「倒産への負の連鎖」の道を転げ落ちていきます。
もしあなたの会社がこのような状態にあるのなら、この後でお話する「経営改善の対策」をおこない、「倒産への負の連鎖」に陥らないようにして下さい。この段階なら選択肢がないような経営危機に陥る可能性はほとんどないといえます。
私は指導させていただいているクライアント様との約束事に
「1円でも外部資金を会社に注ぎ込もうとするときと総資産(=負債+資本)の1%以上の投資をするときは必ず事前に相談すること」
というのがあるくらい事業継続にとって重要な事なのです。